IoTで変わること、変わらないことーMarketing 4.0 次世代マーケティングプラットフォーム研究会(NMPLAB) 第5回総会

2015年8月27日(木)19時~、Marketing 4.0 次世代マーケティングプラットフォーム研究会(NMPLAB) の総会に初参加してきました。これまで「Marketing 4.0」という新たなx.0ワードが気になったまま行きそびれていたのですが、前総会に参加した知人がためになったと勧めるのを聞き、意を決して運営委員会メンバーとなり、初めて参加しました。 その模様と考察を記したいと思います。

 

次世代マーケティングプラットフォーム研究会(NMPLAB) 第5回総会レポート―IoT

当日のアジェンダ(19時~22時15分)は下記のとおり。

折しも同研究会メンバーが2,000名を突破し、テーマが多方面で注目を集めるIoT(モノのインターネット)ということもあり、平日19時開始で180席設けられた会場は盛況でした。

冒頭に発起人であり事業構想大学院教授、アイ・エム・ジェイ執行役員CMO 江端 浩人氏が開会の挨拶。昨年11月の研究会発足からこれまでほぼ隔月で「次世代マーケティングプラットフォーム」「BtoBマーケティング」「クラウド・ファンディング」「共創マーケティング」と幅広いテーマに取り組んできた歩みに触れ、背景としてフィリップ・コトラー氏が「消費者の自己実現欲求にこたえるマーケティング活動」として提唱してきたマーケティング4.0の概要を説明。

来るワールド・マーケティング・サミットジャパン開催にあたり、江端氏の「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン アンバサダー」就任に際する次総会への期待を述べ、本研究会のロゴ案がお披露目されました。

次世代マーケティングプラットフォーム研究会ペナント

次世代マーケティングプラットフォーム研究会ペナント

続いてキーノートセッションとして、東京大学先端科学研究センター 特別教授の稲田 修一氏が「IoT(モノのインターネット)が変えるビジネスと社会」と題して講演。

オランダが過去20年にわたりセンサーとデータを活用して生産と市場を連動させた農業革命のほか、農業経営を見える化するクボタスマートアグリシステム、山崎製パンの企業横断バリューチェーン、P&Gの消費者行動データに基づく顧客価値拡大の取り組みなどを紹介。

多様、多面的なデータ活用により見えなかったものを可視化し現状を正確に把握することで、近未来予測や全体最適化を可能にする例をあげながら、今後求められるビジネスモデルそのもの、マーケティング戦略そのものの変革を述べました。

その後、メーカーの事例発表としてセーフィーCEO 佐渡島 隆平氏が手軽で安全、高精細で低価格のクラウド型カメラセキュリティプラットフォーム「Safie」を、そしてキリン デジタルマーケティング室 主務 松岡 貴英氏が飲料メーカーとしてのIoTの取り組みを紹介しました。

続くパネルディスカッションでは、Heart Catch代表取締役 西村 真理子氏をモデレーターに、パネリストとしてキリン 上代 晃久氏、ZMP代表取締役社長 谷口 恒氏、SAPジャパン バイスプレジデント チーフイノベーションオフィサー 馬場 渉氏、Qrio代表取締役 西條 晋一氏が登壇し、IoTは現在ビジネスをどう変えるか、そして今後の展望などについて議論。キリン上代氏は未来のライフスタイルへの一手としてSBクリエイティブ、Microsoftが手がけるインテリジェント・シェリフによる情報端末、デジタル広告、データ分析およびカスタマー接点の洗練に触れ、ZMP谷口氏はロボット活用による自動運転、測量、物流など多面的なビジネスモデル変革を紹介。SAP馬場氏が官民にわたり推進するIoT活用の課題と挑戦を述べると、Qrio西條氏からはキュリオスマートロックによる鍵のあり方や使い方、生活やビジネスの変化などが語られました。

各セッションとも時間を超過する盛り上がりを見せ、パネルディスカッション後22時過ぎから、2次会で登壇者を囲む和やかな談笑タイムとなりました。

<ビジネスモデルの革新>

以下は初めて参加した感想と、自身がコーポレート・コミュニケーションを担う立場からの考察です。

企業活動の観点からいうとIoTとは、センサーやデータの分析により既存のビジネスモデルや業界、業種を超える取り組みのことです。日本は伝統的にモノ作りが経済の基盤になってきたので、ビジネス・産業・業界メディアの注目は ❝IoT❞ から インダストリー4.0❞ インダストリアル・インターネット❞ といった企業・業界横断的な製造インフラおよび国家的施策にキーワードが移行してきていますが、「ビッグデータの活用によりビジネスの枠組みを変える」という文脈や本質は同じ。目下のところ、消費者や製品の観点からはIoTが、企業間取引や製造工程の観点からはインダストリー4.0がキーワードになる傾向にあります。

それを体現・研究されているのが今回の登壇者達。いずれもイノベーターと呼ぶにふさわしい方々でしたが、その発言から今回の登壇者ではなかったソニーにも間接的に注目が集まりました。というのは、セーフィーはソニーグループのソネットが出資、Qrioもソニーが出資、ZMPにおいてはソニーモバイルコミュニケーションと自動飛行測量を手がける合弁会社エアロセンスを設立と、ソニーがIoTに積極的な姿勢が見えたからです。

しかしIoTを語るうえで不可欠の「変革」という要素は、ソニーにおいてはウォークマンを出したときのようなユーザー行動や世界観の刷新が起きるような大きなムーブメントと類する熱量になったときに、成立するものでしょう。

そして、IoT活用はソニーのようなごくわずかな大企業でなければ無理かといえばNOでしょう。

いずれ個々の企業・企業人がビッグデータ分析により業務形態を変え、ひろく協業することになるだろうと思います。

そして本質的なIoTニーズは、モノづくり(ハードウェア)を伴わないプロフェッショナルサービス業にも浸透するだろうと考えます。


<サービスの革新>

それを垣間見る例が、稲田教授が触れた、IoTによる通信教育の変革でした。

これまでの通信教育は、子どもの数に比例して教材が配られ添削スタッフが配備される必要(生徒数の増加=スタッフの増加)があったのですが、今やコンピュータ添削・データ分析とタブレット活用による教材配布および個別指導が可能になった。これにより、運営リソースのうちこれまで添削スタッフにかかっていた分を、付加価値の高い教材の作成やカスタマイズにシフトし、新たなビジネス価値(教材・指導のマスカスタマイゼーション=質と価値の向上)を生むことができる、というもの。

「教える」というサービスがIoTでモデル変革を起こす例です。

これに通じるのが、SAP馬場氏が触れた、アウトカムエコノミーへの再注目と、スペインのTeatreneu劇場が採用したPay Per Laughシステムの事例です。

アウトカムエコノミーとは、前年のダボス会議でも取り上げられた、データ計測に基づきユーザーが求める需要に応える経済基盤のこと。 ❝インダストリアル・インターネット❞ により生産や供給の枠組みが変わり、消費者が求める結果を企業横断的に瞬時に生成して提供するビジネスモデルへの移行を意味します。

これを今日実現する例として挙がったスペインのPay Per Laughとは、急激な増税と減収に対抗すべくTeatreneu劇場で導入された、入場無料、1スマイル0.3ユーロ(40円強)の笑った分だけ課金するシステムです。座席にiPadを取り付け顔認識機能で笑顔をトラッキングして課金モデルを変えスペイン各地に広まったと言われています。

つまり、「笑いの見える化」「笑える分だけお支払い」という娯楽サービスのビジネスモデル革新も、IoTで可能になるといえます。


<本質を支える変革>

上記の遠隔教育でもお笑い劇場でも、ビジネスの根幹は「教える」「笑わせる」といった普遍的価値の提供からブレていません。

一方で筆者自身が担うコーポレート・コミュニケーションに目をむけると、企業がニュース情報を発信して記事化を促進するパブリシティ(ノンペイド、媒体費は発生しない)をパブリック・リレーションズ(PR)と呼ぶのに対し、制作素材を伴う広告(ペイド、媒体費等が支払われる)にも「PR」と表示されており、PRと広告の線引きが実質的にかき消されています。これは、報道の信頼性の観点からは問題視されるところですが、受け手にはペイドでもノンペイドでも価値ある情報であれば構わないという価値観もあり、PRの定義が状況による曖昧さを含むのが現状です。

PRの本質は、広義においても狭義においても、企業に即したニュースを生み出し認知理解を促進し、話題性を保ちながら、リスク管理・対処と連動して、企業価値を高める」活動です。

今後のコーポレート・コミュニケーションを考えるうえではその本質、ひと言でいえば企業の成長のための情報発信を支える体制変革が必要なのだと思います。 つまり、PRにおけるIoT活用の鍵は、遠隔教育やお笑い劇場と同じく、データ分析、可視化、企業・業界横断的取り組みを骨子とする枠組み作りだと思います。

そしていずれIoTの浸透に伴う社会の変容とともに、データ活用によるビジネスモデルの変化は一般化し、IoTというキーワードは消えるでしょう。専門がPRであれリードジェネレーション(見込み客獲得)であれブランディングであれ何であれ、トレンドを把握する力とともに、コトバに惑わされずに業務の本質を貫く力を磨く訓練が必要だろうと考えさせられました。

 

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